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「魔王」文庫化ビフォーアフター
2009.11.03 17:15
古本屋で、魔王原作のハードカバー版(初版)を見つけました。
伊坂センセーは文庫化で結構変えるって聞いてたましたが、ホンマですね。パラパラめくっただけでも結構細かく加筆修正された部分を見つけて、思わず買ってしまった。
てな訳で、気になったトコだけピックアップしてみました。
初版ゆえか、たまに誤字脱字もありましたが、それは特に問わない方向で。
一箇所だけ、兄貴の一人称が「僕」になってる箇所があるんですが、それも単なる間違いだろうなあ。ちなみに文庫では削られてます。
●<ハ>→ハードカバー
●<文>→文庫
【魔王】
******************************
<ハ>P33
「九十まで生きるつもりなのかよ、兄貴、ずうずうしいな」
世界を変えてやる、くらいの意気込みがなければ、生きてる意味なんてねえよな。
(中略)俺は何歳まで、何の意気込みを持って、生きるつもりなのか。
↓
<文>P43
「九十まで生きるつもりなのかよ、兄貴、ずうずうしいな」
「そういう話じゃないんだ」
******************************
◆文庫では、兄貴のモノローグがバッサリ削られてかなりアッサリになってます。この部分は漫画では復活してるので、てっきりめぐたんのオリジナルかと思いましたが、元々はちゃんとあったんですね。むしろなんで削られたのかが、謎。
漫画では『世界を変えてやる、くらいの~』はアンダーソンの台詞になってますが、こんな大胆な変更なのに原作を微塵も損ねていないという、その構成力の高さに改めて感服。
******************************
<ハ>P33
「俺の話と関係しているんだろうな」彼はいつだって、無自覚に話題を変えていく。
↓
<文>P43
「俺の話と関係しているんだろうな」
******************************
◆やっぱり削られてる兄貴のモノローグ。漫画ではちゃんと兄貴の台詞として復活。
兄貴は地の文だと、潤也の事を「彼」と呼ぶのが新鮮です。
******************************
<ハ>P68
「兄貴がまさか、一緒に来てくれるとは思わなかった」
(中略)
「兄弟の上のほうっていうのはさ、時々、弟の役に立ってみたくなるんだ」
「発作的に?」
「四年に一度、とか」
「次は四年後だってさ、潤也君」詩織ちゃんがけたけたと笑う。
↓
<文>P88
赤字部分削除
******************************
◆遊園地のシーンです。兄弟の貴重な日常シーンという意味でも、ここは削って欲しくなかったなぁ。
******************************
<ハ>P128
↓
<文>P166
遙か下、どこかの繁華街の一室で。ある若者が銃を突きつけられ椅子に座っている。
(中略)
二人は夫婦かもしれないな、と考えたところで意識が戻った。
******************************
◆丸1ページ分にも及ぶ加筆シーン。会社で倒れた兄貴が、鳥になった夢を見てそこからある幻視をしますが、このあたり丸々追加されてます。恐らく、続編(モダンタイムス)の執筆が決まって書き足されたのでしょう。
ここからはモダンタイムスのネタバレになるので反転しますが、
<ここから>
幻視の中身は、
潤也の面影がある青年→潤也と詩織の子供
髭面の男→岡本
男女→拓海と佳代子
でファイナルアンサー?と思ってましたが、「活字倶楽部」の伊坂特集にて、どうやらそれで合ってたらしいと判明。と云っても、モダンタイムスでも潤也Jr.の状況ははっきり描かれてないので、いつか彼が主人公を張る物語を書いて欲しいです。
<ここまで>
******************************
<ハ>P143
「あれは、アンダーソンの家で、アメリカじゃない」
↓
<文>P187
「あれは、アンダーソンの家で、アメリカじゃない」どうしてそんな当り前のことを叫ばなくてはならないのか、理解できなかった。
******************************
◆火事場のシーンです。当たり前のことを当たり前に実行できる兄貴の芯の強さが、モノローグとして追加されました。
******************************
<ハ>P156
手すりに張り付くように、寄りかかり呼吸を整えた。走りながら夢を見るなんて、救いようがない、と俺は呆れる。
↓
<文>P203
手すりに張り付くように、寄りかかり、呼吸を整えた。「見て見ぬふりも勇気ですよ」と誰かが言ってくるのが耳元で聞こえたが、それが何を意味するのかも分からない。走りながら夢を見るなんて、救いようがない、と俺は呆れる。
******************************
◆赤字部分追加。ここもモダンタイムスに絡むエピソードです。最初に文庫を読んだ時には全く意味不明でしたが、活字倶楽部のインタビューによれば、それも見越してのことだったようで。
【呼吸】
******************************
<ハ>P271
潤也君はすでにそのニュースは知っていたらしく、私がその話をした時も、どこか冷めた目をしていた。「何か変わったのかもしれない」と、私が予想もしていない、そんなことを口にもした。
↓
<文>P343
潤也君はそのニュースのことを、私から聞いた時、少し首を傾げて、「犬養って、今までに何回も襲われたんだろ」とぼそっと言った。
******************************
◆「呼吸」も細かい修正が多いのですが、こっからラストまでもう加筆修正の嵐です。
あまりに違いすぎてひとつひとつ取り上げられませんが、文庫では削除されてた部分で印象深いのは、
なぜか頭に蘇ったお兄さんの姿が、犬養首相の姿と重なり、私は笑いそうになる。二人は似ているのかもしれない、と思った後で、死んだお兄さんが、犬養首相にとり憑いたのではないか、と想像もした。
犬養と安藤が実は似てる部分がある、という点については、結構思ってた方もいると思いますが(私も一度そんなネタで書いてますし)、まさにズバリな記述が元々あったという、なかなか衝撃的な部分でした。
てか、ここも別に削らなくても(涙)
あと、兄貴が「あいつこそが魔王かもしれない」と詩織ちゃんに囁くシーン。ハードカバー版ではほとんどホラーです。やめたげて兄貴!いくら詩織ちゃんでもそれキッツイから!鳥肌たっちゃうから!
そんな声があったのかどうかは判りませんが(ネェよ)、文庫ではもう少し軽めに囁いてくれてます。
「呼吸」の終わりはホントに結構変わってます。どう変わってるのかというと、ハードカバー版の方が解り易かったかな?という感じ。漫画のラストは、ハードカバー版の方に近い気がします。恐らく、めぐたんセンセーが読み込んだのも、時期的にみてハードカバーの方が先だからかなーと妄想。
あと、全体的にハードカバー版の方が「不安」のイメージが強い。文庫版の詩織ちゃんは割と終始あっけらかんとしてますが、ハードカバー版では、潤也の異変に戸惑い、いないはずの兄貴の気配に少しだけ怯えを見せるなど、判りやすい反応をしています。
個人的にはハードカバー版の方がすっきり終わってる感じがしますが、例の『活字倶楽部』によれば、ここも意図的に「不自然に完結した感じはなくした」とのこと。
とは云え、モダンタイムスもすっきり終わってるかと云うと、個人的にはちょっと消化不良感があるんですよね。風呂敷広げられっぱなしというか。なので、是非モダンタイムスの続編も欲しいところです。特に、潤也Jr.と佳代子さん。謎多すぎですってこの二人。
さて、軽く書くつもりがエラく長くなってしまいました。もちろんこれで全部ではありませんが、どうしても取り上げたかったところはピックアップしたつもりです。
個人的には、ディレクターズカットとかってどうよ、と思う方なのですが(←後出しジャンケンみたいじゃないですか?)、でもこうして修正前と後を見比べる楽しみと云うのもそれなり解ってるつもりなので、今回たまたまハードカバーを買える機会があって良かったと思います。
皆様も、もし機会がありましたら読み比べてみてはいかがでしょーか。
伊坂センセーは文庫化で結構変えるって聞いてたましたが、ホンマですね。パラパラめくっただけでも結構細かく加筆修正された部分を見つけて、思わず買ってしまった。
てな訳で、気になったトコだけピックアップしてみました。
初版ゆえか、たまに誤字脱字もありましたが、それは特に問わない方向で。
一箇所だけ、兄貴の一人称が「僕」になってる箇所があるんですが、それも単なる間違いだろうなあ。ちなみに文庫では削られてます。
●<ハ>→ハードカバー
●<文>→文庫
【魔王】
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<ハ>P33
「九十まで生きるつもりなのかよ、兄貴、ずうずうしいな」
世界を変えてやる、くらいの意気込みがなければ、生きてる意味なんてねえよな。
(中略)俺は何歳まで、何の意気込みを持って、生きるつもりなのか。
↓
<文>P43
「九十まで生きるつもりなのかよ、兄貴、ずうずうしいな」
「そういう話じゃないんだ」
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◆文庫では、兄貴のモノローグがバッサリ削られてかなりアッサリになってます。この部分は漫画では復活してるので、てっきりめぐたんのオリジナルかと思いましたが、元々はちゃんとあったんですね。むしろなんで削られたのかが、謎。
漫画では『世界を変えてやる、くらいの~』はアンダーソンの台詞になってますが、こんな大胆な変更なのに原作を微塵も損ねていないという、その構成力の高さに改めて感服。
******************************
<ハ>P33
「俺の話と関係しているんだろうな」彼はいつだって、無自覚に話題を変えていく。
↓
<文>P43
「俺の話と関係しているんだろうな」
******************************
◆やっぱり削られてる兄貴のモノローグ。漫画ではちゃんと兄貴の台詞として復活。
兄貴は地の文だと、潤也の事を「彼」と呼ぶのが新鮮です。
******************************
<ハ>P68
「兄貴がまさか、一緒に来てくれるとは思わなかった」
(中略)
「兄弟の上のほうっていうのはさ、時々、弟の役に立ってみたくなるんだ」
「発作的に?」
「四年に一度、とか」
「次は四年後だってさ、潤也君」詩織ちゃんがけたけたと笑う。
↓
<文>P88
赤字部分削除
******************************
◆遊園地のシーンです。兄弟の貴重な日常シーンという意味でも、ここは削って欲しくなかったなぁ。
******************************
<ハ>P128
↓
<文>P166
遙か下、どこかの繁華街の一室で。ある若者が銃を突きつけられ椅子に座っている。
(中略)
二人は夫婦かもしれないな、と考えたところで意識が戻った。
******************************
◆丸1ページ分にも及ぶ加筆シーン。会社で倒れた兄貴が、鳥になった夢を見てそこからある幻視をしますが、このあたり丸々追加されてます。恐らく、続編(モダンタイムス)の執筆が決まって書き足されたのでしょう。
ここからはモダンタイムスのネタバレになるので反転しますが、
<ここから>
幻視の中身は、
潤也の面影がある青年→潤也と詩織の子供
髭面の男→岡本
男女→拓海と佳代子
でファイナルアンサー?と思ってましたが、「活字倶楽部」の伊坂特集にて、どうやらそれで合ってたらしいと判明。と云っても、モダンタイムスでも潤也Jr.の状況ははっきり描かれてないので、いつか彼が主人公を張る物語を書いて欲しいです。
<ここまで>
******************************
<ハ>P143
「あれは、アンダーソンの家で、アメリカじゃない」
↓
<文>P187
「あれは、アンダーソンの家で、アメリカじゃない」どうしてそんな当り前のことを叫ばなくてはならないのか、理解できなかった。
******************************
◆火事場のシーンです。当たり前のことを当たり前に実行できる兄貴の芯の強さが、モノローグとして追加されました。
******************************
<ハ>P156
手すりに張り付くように、寄りかかり呼吸を整えた。走りながら夢を見るなんて、救いようがない、と俺は呆れる。
↓
<文>P203
手すりに張り付くように、寄りかかり、呼吸を整えた。「見て見ぬふりも勇気ですよ」と誰かが言ってくるのが耳元で聞こえたが、それが何を意味するのかも分からない。走りながら夢を見るなんて、救いようがない、と俺は呆れる。
******************************
◆赤字部分追加。ここもモダンタイムスに絡むエピソードです。最初に文庫を読んだ時には全く意味不明でしたが、活字倶楽部のインタビューによれば、それも見越してのことだったようで。
【呼吸】
******************************
<ハ>P271
潤也君はすでにそのニュースは知っていたらしく、私がその話をした時も、どこか冷めた目をしていた。「何か変わったのかもしれない」と、私が予想もしていない、そんなことを口にもした。
↓
<文>P343
潤也君はそのニュースのことを、私から聞いた時、少し首を傾げて、「犬養って、今までに何回も襲われたんだろ」とぼそっと言った。
******************************
◆「呼吸」も細かい修正が多いのですが、こっからラストまでもう加筆修正の嵐です。
あまりに違いすぎてひとつひとつ取り上げられませんが、文庫では削除されてた部分で印象深いのは、
なぜか頭に蘇ったお兄さんの姿が、犬養首相の姿と重なり、私は笑いそうになる。二人は似ているのかもしれない、と思った後で、死んだお兄さんが、犬養首相にとり憑いたのではないか、と想像もした。
犬養と安藤が実は似てる部分がある、という点については、結構思ってた方もいると思いますが(私も一度そんなネタで書いてますし)、まさにズバリな記述が元々あったという、なかなか衝撃的な部分でした。
てか、ここも別に削らなくても(涙)
あと、兄貴が「あいつこそが魔王かもしれない」と詩織ちゃんに囁くシーン。ハードカバー版ではほとんどホラーです。やめたげて兄貴!いくら詩織ちゃんでもそれキッツイから!鳥肌たっちゃうから!
そんな声があったのかどうかは判りませんが(ネェよ)、文庫ではもう少し軽めに囁いてくれてます。
「呼吸」の終わりはホントに結構変わってます。どう変わってるのかというと、ハードカバー版の方が解り易かったかな?という感じ。漫画のラストは、ハードカバー版の方に近い気がします。恐らく、めぐたんセンセーが読み込んだのも、時期的にみてハードカバーの方が先だからかなーと妄想。
あと、全体的にハードカバー版の方が「不安」のイメージが強い。文庫版の詩織ちゃんは割と終始あっけらかんとしてますが、ハードカバー版では、潤也の異変に戸惑い、いないはずの兄貴の気配に少しだけ怯えを見せるなど、判りやすい反応をしています。
個人的にはハードカバー版の方がすっきり終わってる感じがしますが、例の『活字倶楽部』によれば、ここも意図的に「不自然に完結した感じはなくした」とのこと。
とは云え、モダンタイムスもすっきり終わってるかと云うと、個人的にはちょっと消化不良感があるんですよね。風呂敷広げられっぱなしというか。なので、是非モダンタイムスの続編も欲しいところです。特に、潤也Jr.と佳代子さん。謎多すぎですってこの二人。
さて、軽く書くつもりがエラく長くなってしまいました。もちろんこれで全部ではありませんが、どうしても取り上げたかったところはピックアップしたつもりです。
個人的には、ディレクターズカットとかってどうよ、と思う方なのですが(←後出しジャンケンみたいじゃないですか?)、でもこうして修正前と後を見比べる楽しみと云うのもそれなり解ってるつもりなので、今回たまたまハードカバーを買える機会があって良かったと思います。
皆様も、もし機会がありましたら読み比べてみてはいかがでしょーか。
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